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気の向くままに、現在と過去のcultureについて綴ります。どうぞ、お気楽にお付き合いください。

フランス映画『若い女』、おもしろかったですー

若い女を観てきました。

 

※ 右目と左目の光彩の色が違ういわゆるオッドアイ

 

これが主人公なんですけどね。

 

31歳

もう『若い』とも言いかねる年令。

 

冒頭、10年つきあった恋人に捨てられます。

 

 

「あたしを部屋に入れろ!」と、

高級マンションの恋人の部屋のまえで大声をあげ

鉄のドアにドカンドカンと何度も頭突き!

「俺はお前の保護者じゃない」と、

ドアの向こうから恋人の声

 

腹いせに、外に出ていた恋人の猫をかっぱらって

夜のパリをさまよいます。

 

 

社会的にはなんの取柄もない。

 

10年間、

自分の「若さ」を、

剣と盾のようにあやつりながら、

RPGみたいな冒険の旅に出ていたのでしょう。

 

 

そんな勇者が突然、

世界のはじっこからすべり落ちて路頭に迷う。

 

 

疎遠だった母親のところに行っても拒絶され、

転がり込んだ友人にも

「悪いけど出て行って」と言われてしまう。

 

 

先を考えない生き方とはいえ、

それでも彼女は10年の間そういう生き方を通してきたわけです。

さて、ひとりになった今、

何があるのか。

 

もちろん、「キャリア」などない、

けれどその分

こういうタイプの女性特有のたくましさと、

反射神経と瞬発力があるのです(笑)

 

学生と偽り、住み込みのベビーシッターとして女中部屋を確保。

地下鉄で偶然出会った女性に、古い友人と間違われると、

その人物になりきって、お世話になったりする。

 

 

 

映画のチラシには「嘘つき、泣き虫、見栄っぱり」とあります。

 けれど、

彼女はそういうのとも違うんじゃないかと私には思えました。

 

彼女の「嘘」は、見栄ではないし、

相手をだましてやろうとしてつくのでもなくて

その場の「空気」の固さをやわらげるために、

軽く水たまりを飛び越すようにしてついてしまうのです。

水たまりの向こうには、

相手の笑顔とあたたかな手があるから。

 

だから、その相手が彼女の「偽り」に気づいて

「あなた誰なの?」

と、にぎっていた手を振りほどくとき

 

 

私たち観客は、彼女とともにひどく傷つきます。

 

そして、「10年」という歳月のツケを、

一瞬にして引き受けさせられる。

 

この映画は、

開けてはいけない「玉手箱の蓋」を開けてしまった

浦島太郎の、

その後のお話と言えるかもしれません。

 

ベビーシッターでも、

相手の女の子とは、まるで気の合う友達みたいに、

なかよくなってしまう彼女です。

が、母親に嫌われ、学生でないこともばれてしまう。

またしても「あなた誰なの?」です。

 

 

それでも生きていかなくてはならない浦島太郎(♀)は

精いっぱいの愛想笑いで面接を受け

 

 

ショッピングモールの巨大な下着屋で働き始めます。

耳に付けたイヤホンからは、絶えず指示がとんでくる。

激務のため、定着率がとても低い職場。

 

 

それでも、やがて気の許せる仲間もでき、

かつての恋人も心配して連絡してくる。

 

そして彼女の身に、大きな事件が起こり、

彼女はその後の生き方を左右する決断を迫られます。

 

 

彼女が最終的に選んだ道

それは決してハッピーエンドではないのですが、

 

それでも、

自分の人生を誰の手にもゆだねない、

という

今の彼女にふさわしいと思える道なのでした。

 

※ 彼女の額には、「頭突き」をした傷跡が、まるで「聖痕」みたいにずっと残っていて、それが妙におかしい。

 

 

この映画、私には とてもいい作品と感じました。

一方「こんな女カンベンしてよ」と感じる人も多いと思います

面白そうだなと思えるひとは、

ぜひ観てください。

 

 

それではまた