Movies,Musics,and More

気の向くままに、現在と過去のcultureについて綴ります。どうぞ、お気楽にお付き合いください。

『家庭内映画祭』で観た映画4(いちおう駆け足)

さあ、駆け足で書かせてもらいます!

 

「ディストラクションベイビーズ」

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これは、やはり柳楽優弥の為だけにあるような作品でした(2016)

 

親を早くに亡くした兄弟。兄は街で、ヤクザっぽい男には相手構わず、いきなり殴りかかるという、凶暴な野良犬のような生活。何が彼を駆り立てているのかはわからない。ハンパな不良高校生が彼に興味を持ち、行動を共にする。やがて車を盗み、車にいた水商売の女を道連れに、暴力行脚に出発する。

 

「誰も知らない」(2004)で、14歳で現れた柳楽優弥という特殊な役者。

息を飲むような、というか、真空の地を歩くような演技で、

同年のカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞。

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その後は、なにか中途半端な活動しか記憶にありません。

 

この作品では、彼の凍えるような「壊れっぷり!」を正面から観せてくれる。

ただ、良くも悪くもそれだけ

そしてこの袋小路からは、結局誰も出られない。

いや、柳楽優弥は、ようやく首を抜き出すことができたかもしれません。

もしそうなら、よかったと思います。

菅田将暉も、調子に乗った不良の役で出ていますが、

それはプラスにもマイナスにもなっていない気がしました。

 

                                

 

 

「空気人形」

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「誰も知らない」是枝裕和監督が、違う作風を見せてくれた作品(2009)

 

独身男の持つダッチワイフが魂を持つというファンタジーで、

業田良家の漫画の映画化。

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手塚の「やけっぱちのマリア」も同じアイディアでしたね。

 

リンダリンダリンダ(2005)のぺ・ドゥナ主演。

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生まれたばかりの孤独な「空気人形」を、

脆い壊れものようにじっと見つめ続ける。

オタク的な感性を隠そうともしない是枝監督に、

私は好感を持ってしまいました。

 

ああ、ぺ・ドゥナ「私の少女」(2014)が観たい!

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※どうですか、この写真!

けれど、これもAmazonにはありませんでした(泣)

 

                                  

 

 

「あん」

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東京オリンピックの公式映画監督にもなった河瀬直美氏の作品(2015)

小さなどら焼き屋に、働きたいと来た片手が不自由な老女。店主は断ったが、老女が持ってきた餡を食べて美味しさに驚愕、雇うことにする。店は繁盛し出すが、老女がハンセン氏病の施設に住んでいることが知られ、客が来なくなり、老女も身を引く。時が経って、店主は常連だった女生徒と共に、施設に老女を訪ねる。

 

樹木希林さんが亡くなる前、息の長いブームがあり、

これは最晩年、ブームのピークのころ公開されました。

とても丁寧に作られた作品で、もちろん悪くありませんでした。

けれど、姿勢を正して見ることを迫られる、

なにかそんな気はいたしました。

 

                                

 

 

永い言い訳

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これも女性監督の作品(2016)

 

流行作家の主人公。不遇時代を支えた美容師の妻とは関係が冷えており不倫。親友とスキー旅行に行った妻が、バスの転落事故で亡くなる。妻の親友の夫、トラック運転手の男とバス会社抗議の場で初めて合い、自分は自由業で子供もいないことから、彼の子供たちの面倒を見ることになる。他人の家の中に入り、子供を世話をするという新しい生活の中で、亡くした妻との関係を見つめなおして行く。

 

先に、西川美和監督自身が書いた小説を読み、とても良かったです。

小説は、直木賞など複数の賞の候補にもなりました。

原作も良かったけれど、映画も大変チャーミングでした。

 こちらの心に距離を保ちながら触れてくる、その手つきが、

生真面目でなく、無粋でもなく、柔らかくて良いのですね。

 

                                    

 

 

海炭市叙景」「オーバーフェンス」

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そこのみにて光輝く(2013)「きみの鳥は歌える」(2018)と同じく,

佐藤泰志氏の小説の映画化。

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※生前は不遇であり、41歳で自死されたとは言え、

この本にある「死んで花見が咲いた人」とは、

余程の愛情なくしては言えない言葉だと思います。

 

海炭市叙景(2010)「オーバーフェンス」(2016)

前者は18編からなる短編小説が原作のオムニバス。

後者は離婚して故郷に帰り、職業訓練校に通う男と、

傷つきやすく、つい奇矯な行動をとってしまう若い女との

恋愛を描いています。

 

これまで映画化された4作品は、すべて函館市を舞台にした

吹き寄せられたような生活を送る人たちの話。

 

どれも何度でも見直したくなる作品です。

 

侯孝賢エドワード・ヤンの作品を観て、

台湾に行きたくて堪らなくなるように、

私は今、函館に行きたくて堪りません。

 

※「海炭市叙景」には、「長い言い訳」でトラック運転手を好演した

竹原ピストルが、ふたりきりの兄妹の兄で出演しています。

そういえば、この人も越境役者ですね。

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ああ、これでも駆け足か!

次で最後にします。

 

 

「映画祭5」に続きます。

 

『家庭内映画祭』で観た映画3(役者の話を中心に)

 さて続きです。

 

何しろ25本なので、

なかなか書き終わりませんが(笑)

よろしくお付き合いをお願いいたします。

 

                                 

 

 

まずはこれ

海月姫

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前回に引き続き、菅田将暉そして、主演は能年玲奈!!

実はこの作品(2014)、

『女装で出てくる、名前は読めない役者さんがね、

とにかくすごいの!絶対見た方がいいよ!』

と、娘から聞かされ、以来ずっと見たかったのです。

(娘、朝ドラの「ごちそうさん」で菅田を見ていたはずですが、

気づいていない)

それをようやく見られました。

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クラゲオタクの主人公が暮らすのは、オタク女子だけが住む共同アパート。しかしそのアパートの立ち退き危機が発生。その時現れたのは美しすぎる女装男子。 アパートを守るため、彼の指揮により無気力だったオタク女子が立ち上がる。というお話です。

 

菅田は女装にあたり、体重を落とし、骨格矯正までして役に挑んだとか。

あゝ、荒野(2017)では、ボクシング指導した方が、

「ブロ試験に受かるレベル」と言ったそうです。

役に立ち向かう菅田の姿勢は、5年前から全く変わりがない。

 

こうなったら(笑)

菅田自身が「転機となった」と言い、さらに新人賞も得た

初主演作「共食い」(2013)を観ないわけにはいきません。

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でも残念!Amazonには有料も含めてないのでした。

 

それにしても、ジュノンボーイとしてデビューした彼がなぜ

「人でなしの父を持ち、自分に流れるその血を呪う」という、

こういう凄惨な映画の主演に選ばれたのか、

興味のあるところです。

 

そういえば、「そこのみで光輝く」(2013)で

社会の底辺に住むヒロインを演じて見せた池脇千鶴

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1年後のこの作品では、

アフロヘアで鼻まで顔を隠したオタクを演じています。

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今の役者さんって、演じる役の幅が本当に広いですね。

 

                            

 

 

ホットロード

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続けて、能年玲奈(2014)

彼女の映画主演作は、(アニメを除いて)実にこの二本のみです(涙)

 

二人暮らしの母は男に夢中、自分も学校に馴染めない孤独な中学生の少女。やはり周囲から浮いていた同級生に誘われて暴走族の集まりへ。そこで知り合った不良と引かれ合い、次第に心を開き合うようになる。しかし彼は暴走族のリーダーとなり、他チームとの争いに巻き込まれて行く。というお話。

 

この作品は少女漫画の映画化ですが、

当時の読者にとってあまりに「特別」な作品で、

ファンの思い入れが強すぎて実写映画化できなかったとか。

作者による能年の主役指名でようやく制作に漕ぎ着けたとのこと。

 

はい。まさにそういう作品でした。

まだ中学生の少女の中にゆれる壊れそうな心、

それにずっと寄り添って見終わる。

還暦の男があれこれ感想を言うのはやめておきます。

ただ…、もっと能年玲奈をスクリーンで観たい!

それだけ言っておきます。

 

                              

 

 

「凶悪」

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雑誌の編集部に死刑囚から手紙が届き、刑務所へ話を聞きにいくと、複数の隠された殺人事件の告発だった。調べるうちに男の話の信憑性が高まっていく。そして全ての事件の裏には、「先生」と呼ばれる実業家の存在があった。記者は上司の反対を押し切り、粘り強く真実を暴いていく。原作は事件を元にしたノンフィクション。(2013)

 

主演は、山田孝之ピエール瀧リリー・フランキー、この三人。

 

山田孝之を初めて見たのは、NHK六番目の小夜子(2000)でした。

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クールで二枚目の子役さんで、まさかこんな風になるとは!

 

役者としてのピエール瀧を見たのは、百万円と苦虫女(2008)

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奥手で無口な桃農家の跡取り息子の役で、大変よろしかった。

 

リリーフランキー「ぐるりのこと」(2008)

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うまくはないけれど、なんとも自然体で、これも大変よろしかった。

 

ピエール(電気グルーブ)とリリー(イラストレーション)

このふたりは異分野から来た人ですから、

今までにない空気を感じて、強く印象に残りました。

 

※話がズレて申し訳ありませんが、

もう一人、異分野からの越境役者で

ズバ抜けた人を挙げるとすると、

浜野謙太在日ファンク)でしょうね。

婚前特急(2011)を観て、のけぞりました!

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この三人に共通していたのは、

不思議と肩の力が抜けて、生き生きとしていて、

関係性の磁力から、解き放たれているかに見えること。

一口で言えば「いい加減さ」です。

 

話を戻します。

で、この作品では

山田孝之は、ハズレなく堅実なボルテージを維持。

ピエールとリリーは、その枠を外れた人非人ぶりを

評価する映画評が多かったように思います。

 

ええ、わかります。

けれど私には、少し演技が「大仰」と見えてしまうところがあり、 

内容的にも、残酷描写や性描写がクドイと感じました。

観終わっても、事件自体が持つ残酷さのエキスが、

結局あまり胸に落ちて来ませんでした。

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まあ、昔読んだ原作のノンフィクション「凶悪ーある死刑囚の告発」

その初読の印象が、あまりに強烈すぎたのですが。

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だめですね。

このペースでは25作品書き終わりません。

次からはピッチを上げていきます。

 

 

 

「映画祭4」に続きます。

『家庭内映画祭』で観た映画2(菅田将暉を中心に)

さあ、ここからは、

菅田将暉の映画を連続して観ました。

 

私がなぜこんなに菅田将暉に惹かれてしまうのか。

答えはすぐには見つかりません。

とりあえず映画の感想を書かせてもらいます。

 

                          

 

 

「セトウツミ」

 まずはこれ

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大阪の高校生の、ゆるいダラダラとした会話。

それだけをつなげた映画です(2016)

 

うーん、どうなんでしょう。

まあ、なかなか面白くはありました。

 

下校後の、夕暮れ近い河原の石段に

所在なく座る高校生ふたり。

 

菅田の、細く勢いのある身体つきや、ヤンキーっぽい表情から、

何気なく発散される若い色気のようなものがあり

ハッとする瞬間もありました。

 

けれど途中で「もう観るのやめようかな」と

正直何度か思いましたね(笑)

映画館ではなく、家庭内観賞だったのもので。

 

まあ、これはこれでいいとは思いますが。

 

それと、相手の高校生役が

前回書いた「愛の渦」(2014)で門脇麦の相手役だった

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池松壮亮だというのが、

「暗さ」がメジャー化したとでもいうような

時の流れを感じました。

 

                          

 

 

帝一の國

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「メジャー化」といえば、まさにこれ(2019)でしょう。

徹底してコテコテに作り込んだ菅田が観られました。

 

主人公帝一は「総理大臣になり自分の国を作る」という野望のため、日本一の超名門海帝高校の生徒会長になることを決心。その目的達成へ向けた様々な工作、足の引っ張り合いなどが、集団活劇として描かれます。

 

「力強く」とまではいかないのですが、

物語はストレートに、前へ前へとグングン進んでいきます。

その迷いない勢いがこの映画の良さと感じました。

最後までノンストップで面白く見せてくれます。

 

けれどその手柄は、原作漫画にあるのではないか。

 

私の嗅覚が、「原作はもっと面白いはず」と訴えてきます。

それを十二分に味わう、その幸福を得るために

十数巻あるという原作を、誰にも邪魔されず

嫁の実家の二階に寝転んで、時を忘れて読み耽りたい!

https://pingpongplanet.hatenablog.com/entry/2018/08/20/074632

 

というわけで、この作品、映画ならではというところは少ないのですが、

それでも、原作の魅力を2時間の映画にまとめた手腕は

やはり褒められるべきだとも思います。

お客さんはみな「面白かった!」と劇場を後にしたことでしょう。

 

さて、「菅田将暉の映画が見たい!」という

私の菅田将暉欲」

残念ながらこの映画ではあまり満たされませんでした。

 

ただ、エンドロールで流れる

 

ヒロインの永野芽郁半分、青い。)の

ギターを持ったダンスがもうかわいくて!


「帝一の國」美美子ダンス特別版

 

映画の最後に私は胸がきゅんといたしました。

なんかズルイですよね。

 

                              

 

 

あゝ、荒野」前編、後編

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さあ、今度こそ!

濃ゆい菅田将暉が見たい!!

で、この映画です(2017)

 

菅田将暉

「息もできない」のヤン・イクチュンが主演。

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これでは期待するなと言う方がむり。

何しろ

「ボクシング映画にハズレ無し」

それが、私の持論なので。

そして原作はそう、寺山修司

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けれどもです、この作品はちょっと長すぎました。

前後編を合わせて5時間強です。

 

そして時代設定がなぜか、徴兵制施行が囁かれる近未来だったり、

主役のふたり以外の「自殺研究会」のエピソードなどがあったりと、

メインのボクシングのストーリーの流れを邪魔してしまう。

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一方、ボクシング部分は非常に面白く、菅田のトレーニングの動きなど

しっかりとボクサーの動きになっていて、惚れ惚れしましたし、

ふたりが実力をつけ、ランキングを上げていく試合シーンなども、

大変説得力がありました。

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特に、自分を軽んじた相手や、過去に恨みを持った相手と戦う菅田の試合。

「ボクシングが上手いのと、ボクシングが強いのとは、別の問題」

ということ。

そして、殴り合うボクサーの肉体の奥にある「魂」とでも呼ぶべきもの。

それを良く感じさせてくれました。

 

ところがです、クライマックスの、主人公ふたりの最後の試合、

これがどうにもダメなのでした。

 

血みどろ、汗みどろの男の戦いではあっても、

ただの殴り合いは

ボクシングではありません!

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内に秘めた「思いの強さ」とは別に、

肉体への決定的な「一打」が、勝負を決してしまう。

それがボクシングというスポーツです。

 

それまでの長い時間とは違う、3分という特殊な時間の中、

時には1ラウンドであっさりと幕が下りる。

何百という打撃の中で、ただその「一打」を、

いかに相手の急所に打ち込むかが問題なのです。

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この映画のラストで、主人公たちは

永遠とも感じられる時の中で

「決定打」を相手の身体にあてまくり、

「決定打」を全身に受けまくります。

 

それはボクシングではない。

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打つほどに「決定打」はディスカウントされ、

虚化して肉感を離れてゆく。

 

そしてリングの上で、

そんな試合を止めることもなく

闘う者たちが死んでゆくのを

みすみす指をくわえて見ているような、

そんなレフェリーはおりません。

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※私が観た、選手が意識を失った試合。ボクシングは「命のやりとり」です。どれだけ注意を払ったとしても。(この選手は幸い大事には至りませんでした)

 

戦いの迫力を無理に出そうとして、

リングのリアル、緊張感を手放してしまった。

 

最後に盛り上がらずに観賞を終えたのでした。

 

ちなみに、ヤン・イクチュン

「息もつけない」とは全く違う役柄で

いい味を出していました。 

 

                              

 

 

そこのみにて光輝く

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これは良い映画でした。(2013)

 

きみの鳥はうたえる(2018)

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https://pingpongplanet.hatenablog.com/entry/2018/09/11/011016

に先んじて制作された、同じく故佐藤泰志氏の小説の映画化です。

 

主演の綾野剛池脇千鶴、そして最高の「弟キャラ」を見せる菅田将暉

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ある事故をきっかけに心に傷を負い、仕事をやめた男。パチンコ屋で人なっこい青年と知り合い、やがて青年の姉とお互いに引かれ合う仲となる。だが病気の父がいる貧しい家庭や犯罪歴、そして妻子あるパトロンの存在など、複雑な事情が希望を持つことを許さない。そんな中、未来に踏み出そうと足掻く三人の姿が描かれる。

 

重い映画なのですが、登場人物もそして観客も

菅田の無垢なほどの「あっけんからん」としたキャラクターに救われます。

 

先のことは考えず、適当で、馬鹿みたいで、損得の埒外に立っている。

だから傷ついた人の心の中にも、スッと入り込んでしまう。

けれどその心の奥に、繊細な、「臆病なこども」が住んでいる。

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バカ笑いしながら、みんなに甘えながら、

「臆病なこども」は常にまわりを観察して、笑顔で周りを気遣っている。

まわりの環境の、バランスが崩れてしまうことを恐れながら。

 

嫌なことも、笑って目をそらし

知らんふりして、諦めて、

けれど、握り締めていた小さな望みを

守ることが叶わないと分かると

突然全部投げ出してぶち切れる。

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たまらないです。

 

実に7年前の作品なのですが、

私の観た菅田将暉出演作品の中のベストです。

 

※ちなみに、無気力に老いさらばえた母親役は、

なんと伊佐山ひろ子(@にっかつ)

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寝たきりだが欲だけは強い父親役は、なんと田村泰二郎 (@状況劇場

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エンドロールを見るまで、まったく気がつきませんでした!

 

 

 「映画祭3」に続きます

 

『家庭内映画祭』で観た映画1(まずはHな映画から)


 



と言うわけで

 

と化して観た映画について

備忘録がわりに書いておきます。

少し読みにくい

雑然とした記事になることをお許しください。

 

 

まずは最初に観たのはHな映画。

どんな分野においてもH」というのは、

人が行動を促す大きな原動力なのですね(笑)

 

                                

 

ニンフォマニアック」vol1、vol2

 

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これは実は映画館でも観ました(2013)が、今回再見。

ヨーロッパの文学によくある、女性の性遍歴を哲学的に考察した作品。

高齢の読書家の男が、路地で倒れていた女をひろい、彼女の「色情狂」的な

半生を聞くという話。

 

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※ちょっとお堅い月刊紙「ユリイカ」の特集号まで出ています。

 

と言っても、決して小難しいわけではありません。

「スケベな心」だけでも十分観られます。そして

観ている者の性的な「枠組」とか「軸」といったものを、

ガクガクと揺すぶられる快感がありました。

 

けれど何よりも

主人公を年代別に演じる女優さん

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ステイシー・マーティン

(美女。モデルさんでもあります)と

 

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シャルロット・ゲンズブール

ジェーン・バーキンセルジュ・ゲンズブールの娘さん

ですが、なんともうアラ50なのですね)

 

このふたりの女優の魅力的な姿を、

物語が終わるまでずうーっと見ていられる、

それは映画の快感ですね。

 

そして、これからだって何度も見直したい。

いや、どうせだったら、

1時間長くてボカシの無い「ディレクターズカット版」DVDで見たい!

ところがです、今のところ手に入るのは、

字幕のない「輸入版」だけなのでした。残念。

 

                                

 

 

娼年

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さて今度は和物です。

こちらは、舞台版がその大胆さで話題となり、

その劇団「ポツドール」主宰の三浦大輔氏自身が監督をして、

同じ松坂桃李主演で映画化(2017)されたもの。

 

生きる目的を失っていた大学生が、会員制の女性向け娼夫となり

その中で様々な女性会う中で、性の素晴らしさに目覚めていくという内容。

 

これは大変に納得のいくいやらしさでした。

女性の視点から

性の欲望とその放熱

を描いているのがポイントだと思います。

 

狩猟本能主体の男性向けポルノより、

こちらの方が断然いやらしくて

私は好きです(笑)

 

                                  

 

 

「愛の渦」

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娼年」が良かったので、同じ三浦大輔監督の作品(2014)を再見。

「着衣時間わずか18分」というキャッチコピーが戦闘的です。

こちらもポツドールの舞台の映画化。

 

業者が主催する乱行パーティ。そこに集まった男女八人の

マンションの一室での一夜を描きます。

 

今見返すと、その後売れた役者さんたちがたくさん出ています。

そして何よりも、

「地味でまじめそうな容姿ながら、誰よりも性欲が強い女子大生」

という役を演じた門脇麦

今回見ると、彼女の役に対する取り組みがキチンと感じられました。

初見では、いやらしさにばかり目が行った自分を強く反省。

ちなみに、彼女がNHKの朝ドラ「まれ」に出演したのはこの翌年です。

 

                                  

 

 

変態仮面」「変態仮面アブノーマルクライシス」

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さてこれは、パンティをかぶると超人に変身するという

大変バカげた内容の作品(2013、2016)

ポスターの本気度が高くすばらしいですね。


そしてその内容も、手を抜かずきっちりと高レベルに仕上げており、

実に見上げたものです。

役者陣も主人公の鈴木亮平、悪役にムロツヨシ安田顕

そしてヒロインに清水富美加といずれも良い。拍手!!

 

 

原作は少年漫画誌に連載されたもので、

ふっくらしたブリーフ越しの股間を悪人の顔に押しつけ

「違う。それは私のおいなりさんだ」

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というセリフが私は大好きです。

映画も原作の明るい良さを、キチンと生かしていました。

 

                               

 

 

※さて、ここからはHモノではありません。

「翔んで埼玉」

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これも漫画が原作で、興行的にもヒットしました(2019)

 

東京都が一強体制で関東を支配する架空の日本。都内へ入るには通行手形がいるという被差別状況を変えようと、埼玉県民のリーダーが立ち上がる、それを邪魔するのは都知事におもねる千葉の主導者。といった内容のパロディ偽歴史活劇。病人に「埼玉県民は道端の草でも食っていろ。それで治る」といった言動が飛び交います。

 

楽しみにしていた作品で、面白く観始めましたが、

正直、途中で少々ダレました。

「被差別」をパロディにして、勢いよくもてあそぶのは良いのですが、

それをテコにした破壊力というのか、そこから突き抜けるものがない。

で、ドラマのベースとなる「場」がいつまでも変わらない。

良くできていますが、結局「お約束」の枠内でお話が進んでしまいます。

 

 評判のGAKUTOも確かに良かったのですが、

私の目が行くのは、やはり二階堂ふみ

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最初に彼女を見たのは熱海の捜査官(2010)のわがまま女学生

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ヒミズ(2011)では

同じく「熱海の…」に出ていた染谷将太とともに、

生々しさを感じさせる見事な演技を見せてくれました。

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そして今では、どんな役でもこなす女優さんになりましたね。

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そしてこの春(2020)は朝ドラの主演と、

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 本当に目が離せません。

 

 

「映画祭2」に続きます

 

『家庭内映画祭』開催へ

コロナ禍で自宅に引きこもり

ヨガやボクシングやボイトレ

「習い事」もすべて休止です。

 

これまでAmazon Primeは、送料無料だけで

特典のVideoの方は、ほとんど利用していませんでした。

 

けれど大きなスクリーンで映画を見られない現在

改めて作品のラインナップを見てみたところ、

なんとなんと

ニンフォマニアック」vol1、vol2が無料で見られるのを発見!

 

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こんな作品が見られんだったら

「もしや」

と検索をかけてみたところ

あるわあるわ……嬉しい誤算でした。

 

あとはもう、急な坂を転げ落ちるように

「家庭内映画祭」を絶賛開催中!

 

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ummmmmm

 

大きめの画面のMacで見るとなかなか臨場感もあるし、

たとえ途中で中断しても

 

トイレで、あるいはお風呂で、

そして布団に寝転んで、

iPadiPhoneといった手持ちのデバイスのおかげで

 

どこからでも続きから見られる!

 

 

そこで、スクリーンで見損ねてしまった映画の

落穂拾い

 

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こうなると、もう王子は 

 

無料を良いことに

25本も観てしまいました。

 

うーん

 

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はやく人間になりたーい!

 

 

 

コロナの日々

緊急事態宣言が出たころからですが、

 

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会社と相談して自宅待機

にさせてもらっています。

何しろこちらは、再就職組

そして前期高齢者

感染が恐ろしい。

 

外出はほとんどしていませんが

念のため、

毎朝夫婦で、体温と血中酸素を計測。

今のところ異常はありません。

 

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私より少し前に、

微熱のため自宅待機を選んだ友人に

メールで様子を聞いてみました。

 

『その後、悪化はしていないけれど、

高原状態が続いたまま治ることもない。

 

遅れて同じ状態になった妻と

不安を抱えたまま過ごしている。

 

先日、予約して「発熱外来」に行った。

 

担当医が言うには

「症状は、保健所に検査を依頼するレベルではない。

コロナであるかどうかの判断はここではできない。

対処療法としての薬は処方します。

もし、今後体調が大きく変化した場合は、

すぐに電話をください」

  

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朝昼晩と薬を飲んでるけど、

何にも変わらない。

 

なんかさ、

女房とふたり、

いきなり何もない空き地に出てしまって

立ち尽くしている気分だよ』

 

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同じような状況の方もきっと多いでしょう。

 

期せずして生まれた「コロナ」休暇。

私たち夫婦も、もう2週間以上家にいます。

 

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ちょうど家のリフォームをしたばかりだったので、

古いものを思い切って処分したり、

家具のレイアウトを変えてみたり、

 

手付かずで放り出してあった「計画」を、

少しずつ実行したり。

 

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※イエルク・ミュラーの絵本「変わりゆく農村」を飾る

https://pingpongplanet.hatenablog.com/entry/2018/03/09/062615

 

AmazonPremiumで映画を見たり。

 

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目に見えることのない「コロナ禍」を避け

「家」という、ささやかなシェルターに籠って

時の流れるまま、静かに呼吸していると

 

自分の内面がゆっくりと

変化しているのを感じます。

 

そして家の隙間から入りこむ風の匂いに

社会の大きな枠組みが

もう元には戻らない変容を遂げていることも。

 

 

今日は、とりあえず、

家にあった小豆を煮て

 

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食べました。

 

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おいしい。

 

「昭和30年」について(はじめに①)

かなり、久しぶりのブログになります。

新しい店舗を開いての、新装開店です。

 

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お世話になる大家さんを変え、

気持ちも一新、

店の名前も変えております。

 

少々説明をせてください(その1)

 

 

私が生まれた昭和30年は、

日本が敗戦を迎えて、ちょうど10年目の年です。

 

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前年に「ゴジラ」が公開され、

翌年には「もはや『戦後』ではない」と経済白書で宣言されて、

いよいよ高度経済成長が始まることになります。

 

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民放のテレビ局が開局。

トヨタや日産が「マイカー」の生産を始めた、そんな年。

 

ちなみに同年生まれの有名人を挙げると、

明石家さんま所ジョージ中村勘三郎

郷ひろみ西城秀樹野田秀樹

矢野顕子鳥山明

なんとなく

イメージをつかんでもらえるのではないでしょうか。

 



団塊の世代」と呼ばれる、

終戦のベビーブームに生誕し、

その後長く「戦後文化」を牽引してくれ人たちとは、

明らかに空気感が違います。

 

物心がついたときには、

お茶の間に当たり前にテレビがあった、

最初の世代なのです。

 

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小さな頃は月刊漫画誌で、

鉄腕アトム」「鉄人28号」「サスケ」に夢中になり、

週刊誌全盛期には「おそ松くん」や「オバケのQ太郎」に大はしゃぎ、

「墓場の鬼太郎」「サイボーグ009」で興奮し、

10代も終わりに近く、

高校を卒業した年でさえ、

私も友人たちも、

髭の生え始めた顔をブラウン管に向けて、

宇宙戦艦ヤマト」を眺めながら

ご飯を食べていたのです。

 

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つまり、

今や世界に広がる「オタク的感性」を、

本国日本において、最初に身に宿した世代

と言えるでしょう。

 

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ちなみに

空気清浄機に「コスモクリーナー」と名付けた

オウム真理教

麻原彰晃も同い年です

 

 

『「王子」について』につづきます

pingpongplanet.hatenablog.com

「王子」について(はじめに②) - 昭和30年生まれ「アングラ王子」のブログ


pingpongplanet.hatenablog.com