『家庭内映画祭』で観た映画2(菅田将暉を中心に)
さあ、ここからは、
菅田将暉の映画を連続して観ました。
私がなぜこんなに菅田将暉に惹かれてしまうのか。
答えはすぐには見つかりません。
とりあえず映画の感想を書かせてもらいます。
「セトウツミ」
まずはこれ
大阪の高校生の、ゆるいダラダラとした会話。
それだけをつなげた映画です(2016)
うーん、どうなんでしょう。
まあ、なかなか面白くはありました。
下校後の、夕暮れ近い河原の石段に
所在なく座る高校生ふたり。
菅田の、細く勢いのある身体つきや、ヤンキーっぽい表情から、
何気なく発散される若い色気のようなものがあり
ハッとする瞬間もありました。
けれど途中で「もう観るのやめようかな」と
正直何度か思いましたね(笑)
映画館ではなく、家庭内観賞だったのもので。
まあ、これはこれでいいとは思いますが。
それと、相手の高校生役が
前回書いた「愛の渦」(2014)で門脇麦の相手役だった
池松壮亮だというのが、
「暗さ」がメジャー化したとでもいうような
時の流れを感じました。
「帝一の國」
「メジャー化」といえば、まさにこれ(2019)でしょう。
徹底してコテコテに作り込んだ菅田が観られました。
主人公帝一は「総理大臣になり自分の国を作る」という野望のため、日本一の超名門海帝高校の生徒会長になることを決心。その目的達成へ向けた様々な工作、足の引っ張り合いなどが、集団活劇として描かれます。
「力強く」とまではいかないのですが、
物語はストレートに、前へ前へとグングン進んでいきます。
その迷いない勢いがこの映画の良さと感じました。
最後までノンストップで面白く見せてくれます。
けれどその手柄は、原作漫画にあるのではないか。
私の嗅覚が、「原作はもっと面白いはず」と訴えてきます。
それを十二分に味わう、その幸福を得るために
十数巻あるという原作を、誰にも邪魔されず
嫁の実家の二階に寝転んで、時を忘れて読み耽りたい!
https://pingpongplanet.hatenablog.com/entry/2018/08/20/074632
というわけで、この作品、映画ならではというところは少ないのですが、
それでも、原作の魅力を2時間の映画にまとめた手腕は
やはり褒められるべきだとも思います。
お客さんはみな「面白かった!」と劇場を後にしたことでしょう。
さて、「菅田将暉の映画が見たい!」という
私の「菅田将暉欲」は
残念ながらこの映画ではあまり満たされませんでした。
ただ、エンドロールで流れる
ギターを持ったダンスがもうかわいくて!
映画の最後に私は胸がきゅんといたしました。
なんかズルイですよね。
「あゝ、荒野」前編、後編
さあ、今度こそ!
濃ゆい菅田将暉が見たい!!
で、この映画です(2017)
菅田将暉と
「息もできない」のヤン・イクチュンが主演。
これでは期待するなと言う方がむり。
何しろ
「ボクシング映画にハズレ無し」
それが、私の持論なので。
そして原作はそう、寺山修司。
けれどもです、この作品はちょっと長すぎました。
前後編を合わせて5時間強です。
そして時代設定がなぜか、徴兵制施行が囁かれる近未来だったり、
主役のふたり以外の「自殺研究会」のエピソードなどがあったりと、
メインのボクシングのストーリーの流れを邪魔してしまう。
一方、ボクシング部分は非常に面白く、菅田のトレーニングの動きなど
しっかりとボクサーの動きになっていて、惚れ惚れしましたし、
ふたりが実力をつけ、ランキングを上げていく試合シーンなども、
大変説得力がありました。
特に、自分を軽んじた相手や、過去に恨みを持った相手と戦う菅田の試合。
「ボクシングが上手いのと、ボクシングが強いのとは、別の問題」
ということ。
そして、殴り合うボクサーの肉体の奥にある「魂」とでも呼ぶべきもの。
それを良く感じさせてくれました。
ところがです、クライマックスの、主人公ふたりの最後の試合、
これがどうにもダメなのでした。
血みどろ、汗みどろの男の戦いではあっても、
ただの殴り合いは
ボクシングではありません!
内に秘めた「思いの強さ」とは別に、
肉体への決定的な「一打」が、勝負を決してしまう。
それがボクシングというスポーツです。
それまでの長い時間とは違う、3分という特殊な時間の中、
時には1ラウンドであっさりと幕が下りる。
何百という打撃の中で、ただその「一打」を、
いかに相手の急所に打ち込むかが問題なのです。
この映画のラストで、主人公たちは
永遠とも感じられる時の中で
「決定打」を相手の身体にあてまくり、
「決定打」を全身に受けまくります。
それはボクシングではない。
打つほどに「決定打」はディスカウントされ、
空虚化して肉感を離れてゆく。
そしてリングの上で、
そんな試合を止めることもなく
闘う者たちが死んでゆくのを
みすみす指をくわえて見ているような、
そんなレフェリーはおりません。
※私が観た、選手が意識を失った試合。ボクシングは「命のやりとり」です。どれだけ注意を払ったとしても。(この選手は幸い大事には至りませんでした)
戦いの迫力を無理に出そうとして、
リングのリアル、緊張感を手放してしまった。
最後に盛り上がらずに観賞を終えたのでした。
ちなみに、ヤン・イクチュン、
「息もつけない」とは全く違う役柄で
いい味を出していました。
これは良い映画でした。(2013)
「きみの鳥はうたえる」(2018)
https://pingpongplanet.hatenablog.com/entry/2018/09/11/011016
に先んじて制作された、同じく故佐藤泰志氏の小説の映画化です。
主演の綾野剛と池脇千鶴、そして最高の「弟キャラ」を見せる菅田将暉
ある事故をきっかけに心に傷を負い、仕事をやめた男。パチンコ屋で人なっこい青年と知り合い、やがて青年の姉とお互いに引かれ合う仲となる。だが病気の父がいる貧しい家庭や犯罪歴、そして妻子あるパトロンの存在など、複雑な事情が希望を持つことを許さない。そんな中、未来に踏み出そうと足掻く三人の姿が描かれる。
重い映画なのですが、登場人物もそして観客も
菅田の無垢なほどの「あっけんからん」としたキャラクターに救われます。
先のことは考えず、適当で、馬鹿みたいで、損得の埒外に立っている。
だから傷ついた人の心の中にも、スッと入り込んでしまう。
けれどその心の奥に、繊細な、「臆病なこども」が住んでいる。
バカ笑いしながら、みんなに甘えながら、
「臆病なこども」は常にまわりを観察して、笑顔で周りを気遣っている。
まわりの環境の、バランスが崩れてしまうことを恐れながら。
嫌なことも、笑って目をそらし
知らんふりして、諦めて、
けれど、握り締めていた小さな望みを
守ることが叶わないと分かると
突然全部投げ出してぶち切れる。
たまらないです。
実に7年前の作品なのですが、
私の観た菅田将暉出演作品の中のベストです。
※ちなみに、無気力に老いさらばえた母親役は、
なんと伊佐山ひろ子(@にっかつ)
寝たきりだが欲だけは強い父親役は、なんと田村泰二郎 (@状況劇場)
エンドロールを見るまで、まったく気がつきませんでした!
「映画祭3」に続きます