『家庭内映画祭』で観た映画4(いちおう駆け足)
さあ、駆け足で書かせてもらいます!
「ディストラクションベイビーズ」
これは、やはり柳楽優弥の為だけにあるような作品でした(2016)
親を早くに亡くした兄弟。兄は街で、ヤクザっぽい男には相手構わず、いきなり殴りかかるという、凶暴な野良犬のような生活。何が彼を駆り立てているのかはわからない。ハンパな不良高校生が彼に興味を持ち、行動を共にする。やがて車を盗み、車にいた水商売の女を道連れに、暴力行脚に出発する。
「誰も知らない」(2004)で、14歳で現れた柳楽優弥という特殊な役者。
息を飲むような、というか、真空の地を歩くような演技で、
同年のカンヌ国際映画祭主演男優賞を受賞。
その後は、なにか中途半端な活動しか記憶にありません。
この作品では、彼の凍えるような「壊れっぷり!」を正面から観せてくれる。
ただ、良くも悪くもそれだけ。
そしてこの袋小路からは、結局誰も出られない。
いや、柳楽優弥は、ようやく首を抜き出すことができたかもしれません。
もしそうなら、よかったと思います。
菅田将暉も、調子に乗った不良の役で出ていますが、
それはプラスにもマイナスにもなっていない気がしました。
「空気人形」
「誰も知らない」の是枝裕和監督が、違う作風を見せてくれた作品(2009)
独身男の持つダッチワイフが魂を持つというファンタジーで、
業田良家の漫画の映画化。
手塚の「やけっぱちのマリア」も同じアイディアでしたね。
生まれたばかりの孤独な「空気人形」を、
脆い壊れものようにじっと見つめ続ける。
オタク的な感性を隠そうともしない是枝監督に、
私は好感を持ってしまいました。
ああ、ぺ・ドゥナの「私の少女」(2014)が観たい!
※どうですか、この写真!
けれど、これもAmazonにはありませんでした(泣)
「あん」
東京オリンピックの公式映画監督にもなった河瀬直美氏の作品(2015)
小さなどら焼き屋に、働きたいと来た片手が不自由な老女。店主は断ったが、老女が持ってきた餡を食べて美味しさに驚愕、雇うことにする。店は繁盛し出すが、老女がハンセン氏病の施設に住んでいることが知られ、客が来なくなり、老女も身を引く。時が経って、店主は常連だった女生徒と共に、施設に老女を訪ねる。
樹木希林さんが亡くなる前、息の長いブームがあり、
これは最晩年、ブームのピークのころ公開されました。
とても丁寧に作られた作品で、もちろん悪くありませんでした。
けれど、姿勢を正して見ることを迫られる、
なにかそんな気はいたしました。
「永い言い訳」
これも女性監督の作品(2016)
流行作家の主人公。不遇時代を支えた美容師の妻とは関係が冷えており不倫。親友とスキー旅行に行った妻が、バスの転落事故で亡くなる。妻の親友の夫、トラック運転手の男とバス会社抗議の場で初めて合い、自分は自由業で子供もいないことから、彼の子供たちの面倒を見ることになる。他人の家の中に入り、子供を世話をするという新しい生活の中で、亡くした妻との関係を見つめなおして行く。
先に、西川美和監督自身が書いた小説を読み、とても良かったです。
小説は、直木賞など複数の賞の候補にもなりました。
原作も良かったけれど、映画も大変チャーミングでした。
こちらの心に距離を保ちながら触れてくる、その手つきが、
生真面目でなく、無粋でもなく、柔らかくて良いのですね。
「海炭市叙景」「オーバーフェンス」
「そこのみにて光輝く」(2013)「きみの鳥は歌える」(2018)と同じく,
故佐藤泰志氏の小説の映画化。
※生前は不遇であり、41歳で自死されたとは言え、
この本にある「死んで花見が咲いた人」とは、
余程の愛情なくしては言えない言葉だと思います。
「海炭市叙景」(2010)「オーバーフェンス」(2016)
前者は18編からなる短編小説が原作のオムニバス。
後者は離婚して故郷に帰り、職業訓練校に通う男と、
傷つきやすく、つい奇矯な行動をとってしまう若い女との
恋愛を描いています。
これまで映画化された4作品は、すべて函館市を舞台にした
吹き寄せられたような生活を送る人たちの話。
どれも何度でも見直したくなる作品です。
台湾に行きたくて堪らなくなるように、
私は今、函館に行きたくて堪りません。
※「海炭市叙景」には、「長い言い訳」でトラック運転手を好演した
竹原ピストルが、ふたりきりの兄妹の兄で出演しています。
そういえば、この人も越境役者ですね。
ああ、これでも駆け足か!
次で最後にします。
「映画祭5」に続きます。