Movies,Musics,and More

気の向くままに、現在と過去のcultureについて綴ります。どうぞ、お気楽にお付き合いください。

「散歩する侵略者」感想(前編)侵略テーマと「盗まれた町」

あの黒沢清の最新作。

散歩する侵略者」の感想です。

 


原作はお芝居らしいのですが、

題名がもう黒沢清にぴったり(笑)


これは観るしかない!
で、期待通り面白かったです。

 

本編の感想の前にすこし前置きを。


この作品は宇宙人からの侵略をテーマにしたSFです。


「侵略テーマ」と聞いて、皆さんがまず思い浮かぶのは、

近年映画化されアニメにもなった「寄生獣」(90〜95年)ではないでしょうか。

 

 


私も連載当時、夢中になって読みました。

もうこの漫画、「漂流教室」と並ぶ「古典」だと思います。


多分その強い影響で、

漫画における「侵略テーマ」モノは

現在一大潮流を築いています。

 

で、初めて少年漫画にこのテーマを持ち込んだのが

石森章太郎少年マガジンに連載した「狂犬」という作品でした。

f:id:pingpongplanet:20200421182157j:plain


f:id:pingpongplanet:20200421182252j:plain

縁の下に隠された「豆さや」から、そっくりな人間が生まれて、

街の人たちとこっそりと入れ替わっていく。

これを読んだ当時、もう本当にゾクゾクするほど怖かった!

 

けれどもこのアイデアは、実はイタダキでした。

ちなみに、石森先生、

この作品でヒッチコックの「鳥」も少々イタダイています(笑)

もっともそれは部分であって、

「狂犬」という作品のストーリーの、中心となるアイデアは、

石森先生のオリジナルであることは申し添えておきます。

 

すみません。話がかなり外れました

さてさて、そのオリジネーターが「盗まれた街」という作品です。

作者はジャック・フィニイ

 

  


それまでも、

ウエルズの「宇宙戦争」のように

光線を放つ円盤に乗ったタコ型宇宙人が攻めてくるタイプのモノは

もちろんありました。


でも、これは全く違う。
宇宙人は人間と瓜二つ。

それが知らぬ間に、町の人たちとだんだん入れ替わっていく。


この作品は

翌56年「ボディ・スナッチャー」として映画化され、

(監督はダーティハリードン・シーゲル

脚本はワイルドバンチサム・ペキンパー

今ではその白黒フィルムは、

米国の永久保存登録となり、その後も二度リメイクされています。

 

  

 

で、その「盗まれた町」、

私の古い本の解説に都築道夫氏が書いていますが、

「最初はただのサスペンス小説として出版された」とのこと。


そう、読んでもらうとわかるのですが、

ミステリー小説の骨法で書かれているのです。
半分まで読み進んでも、まさかSFだとは誰も思わない。

これはいったいどういうことなんだと、

読み進むにつれてミステリー度がいやましに高まっていく。
それがある段階でポンと則を超える。

 

読んでた人はひっくり返ったでしょうね。


オーソン・ウェルズが「宇宙戦争」をラジオドラマ化した時、

宇宙人襲撃の臨時ニュースから始めたので、

一部でパニックが起こったという伝説的なエピソードがありますが、

それを思い出します。

 

 


で、長々と書きましたが、

こうしたものが好きな方は是非読んでみてください。
古典の中には、今の感覚では通じなくなったものもありますが、

これは大丈夫。

 

フリドレック・ブラウンの「火星人ゴーホーム」の解説で、

筒井康隆氏が

「あなたはこれからこの小説を初めてお読みになるわけだ。

いや、実にうらやましい」

と書かれていましたが、

私もそういう気分。

 

次は、いよいよ「散歩する侵略者」本編の感想です。